「メメント」「ダークナイト」「インセプション」などなど、数々の名作をこの世に残し揺るぎない地位を確立させたクリストファー・ノーラン監督。なぜ彼が21世紀を代表する監督まで登り詰めることができたのか?学生時代から現在までこれまでの歩みに迫る!
ノーラン・ヴァリエーションズ クリストファー・ノーランの映画術 [ トム ショーン ]
生まれから学生時代まで
イギリス人のコピライターである父と客室乗務員である母親のもとで生まれたノーランは、イギリスのロンドン出身です。イギリスとアメリカ両方の国籍を持っており、幼少期はロンドンとシカゴを行き来していたそう。そんな彼は7歳の頃にリバイバル上映で観た「スター・ウォーズ ep4/新たなる希望」、「2001年宇宙の旅」に感動し、弟ジョナサンと8mm映画の「スペース・ウォーズ」製作しており現存しているが、家族以外の目に触れさせない意向である。また「インターステラー」は幼少期に観た「2001年宇宙の旅」の参考にしたと語っており、ブラックホールへと突入したシーンの映像美には似ている部分が多くある。その後、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンに入学し、イギリス小説を学びつつ短編映画の製作を始めている。彼の最大の特徴である脚本力はこの学生時代から培われていたのですね!
大学卒業後
大学でイギリス小説を学び映画人へと志していたノーランだが、大学卒業後は一度サラリーマンを経験しており、広報ビデオ製作会社へ入社している。この時、休日を自分の好きな映画製作に割り当て誕生したのがデビュー作「フォロウィング」!製作期間は約1年だが、驚くべきなのはその製作費。約6600ドル(日本円にして約70万円)で製作されており、家族や友人の部屋をセットに使ったそう。この作品はもちろん良作ではあるが、映画会社からは不採用の通知のみが届いている。彼はある取材で当時のことを「イギリスは閉鎖的な街であるが、ハリウッドは素晴らしい心の広さがある」と語っているが、恐らくこの時の出来事を指しているだろう。
2作品目「メメント」で一気に時の人に
2作目となった「メメント」で一気に注目されるようになり、ロサンゼルス映画批評家協会賞やインディペンデント・スピリット賞などの数々の賞を受賞する。脚本は、弟のジョナサン・ノーランが書いた短編を基にしており、現在をモノクロ、過去をカラーで描いた斬新なアイディアと、エンディングが時系列でいうと物語の中間に位置するという描き方がこれまでのセオリーを覆した形になった。2000年代には新生「バットマン」シリーズの監督に抜擢され、2008年公開の「ダークナイト」では「バットマン」シリーズ最大のヒットとなり、最終的に全米興行収入歴代2位、世界興行収入歴代4位を記録した(公開当時)。忙しい毎日を送る彼はこの頃から弟のジョナサンと共同で映画製作をするように。2006年公開の「プレステージ」では、バッドマン製作から手が離せないことから弟も脚本に加わっている。そうして「インセプション」や「インターステラー」、「TENET」など数々のヒット作を続々誕生させていったのである。
ノーランが最も大事にする“リアル”と“時間”
これまではノーランのこれまでの生い立ちから現在までを語りましたが、最後に彼が映画製作で大事にしているポイント2つを紹介します!1つ目は“リアル”という点。彼はとにかくこの部分に拘ります。1番有名な話でいうと、彼はCGをほとんど使わず、IMAXカメラを愛用しているということ。取材の際に語っていたのは観客には映画に没入して欲しいということ。その為には現実とはかけ離れた映像を使うのはナンセンスで、その点の相性の良さからIMAXカメラを愛用しているとのこと。他にも「インタステラー」、「TENET」ではスタッフ陣にノーベル科学賞の受賞歴のあるキップ・ソーンを招き、念密に科学考証を行っていたり、ジェット機爆発のシーンでは本物のジェット機を使用していたりと徹底的にリアルを追求しているのは彼の持ち味。
もう一つが“時間”という概念を覆してくるところ。「メメント」「インセプション」「インターステラー」「TENET」など全ての作品に関係しているのが時間を自在に操っているところ。「インセプション」では夢に階層が下にいくにつれて時間のスピードが遅くなったり、「インターステラー」では時間と重力の相対性理論をモチーフに、「TENET」では逆行の世界を作品内で築きあげた。リアルには拘りながらも、映画だけでしか体感できない世界を作り上げるのがモットーだと取材で語っていたが、その鍵となるのが彼の中で時間だったのだ。特に「インセプション」では構想から20年の月日を経て作品が完成し、彼の人生の中で時間の概念に向き合っていることがよくわかる。
以上、クリストファー・ノーランの紹介でした!
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